指揮者のつぶやき

【ルポ】『合唱とワークショップ…ありそうでなかった組み合わせ』

『合唱とワークショップ…ありそうでなかった組み合わせ』

草谷緑
(NHKエデュケーショナル
教育部シニアプロデューサー)

阪大WSDのだいすけさん(橋爪大輔さん)は、EVANという社会人の合唱団の指揮者をしている。EVANは平均年齢27歳の小さな合唱団で、街角や施設などに自分たちから出向いて歌っている。そのEVANが中学校の合唱団でワークショップをし、その成果を一週間後に駅前で発表するというので、撮影係としてはるばる京都まで、先週末と今週末、二往復してきた。仕事ではなく、純粋に好奇心で衝動的に。なぜかというと、「合唱」と「ワークショップ」がどんなふうに組み合わさるのか、興味津々だったから。

私は、仕事で数多くの合唱部を見てきた。盛んな合唱部には、必ずと言っていいほど熱心な指導者がいて、そのリーダーシップのもとにメンバーが集まり、まとまり、一生懸命練習をして力をつけている。「合唱のクオリティーは、究極的には指導者次第」…そのことに若干腑に落ちないものを感じつつ、でもまあ、合唱はとはそもそもそういうものなのかも、と思っていた。だから、だいすけさんがワークショップを合唱に取り入れようとしていると知って、「え?どうやって?」とびっくりした。ワークショップであるからには、トップダウンではなく、メンバー同士がフラットに学び合う姿が見られるはず。それが可能だったらすごい!と思った。

1回目。七夕の日。うだるような暑さの中、EVANと中学生が初顔合わせ。WSが始まった。WSは、良く構成されていた。アイスブレイクはじゃんけんイモムシ。メインの活動では、中学生と大人を混ぜてグループ分けし、それぞれのグループに「たのしい」「きたえる」などテーマを与えて、そのテーマに会った合唱ゲームを考えさせる。EVANのメンバーは、WSDではない。ただの合唱好きな若い社会人。だから、オズオズと中学生に接するような微笑ましい場面も。中学生は中学生で、アイデアが浮かばなくて困った顔をしたりしていた。でも、時間がたつにつれ少しずつ笑顔が出てきた。

時間が来たら、考えたゲームを発表。みんなでやってみる。そしてその後で、そのグループに与えられたテーマがなんだったのかを当てる。この頃にはだいぶ和気あいあいとしていて、時おり爆笑も。EVANと中学生が仲良くなる、という、ワークショップの最大のねらいは達成されていた。そして、活動のなかに「合唱って何だろう」と考える仕掛けがあったため、EVANも中学生も、「合唱が大すき」という共通項で結ばれている、ということを実感できたんじゃないかと思う。

一週間後の発表当日。まずは学校に集合してリハーサルをする。顧問の先生によると、中学生たちは先週のワークショップをきっかけに、がぜんやる気スイッチが入って、一週間一生懸命練習してきたとのこと。団員に個別に歌の相談を持ちかける中学生の姿もあった。

本番は、山科駅前の地下道のわきにあるコンサートスペース。曲はアンジェラ・アキの「手紙」で、15歳の自分と大人になった自分が対話をする内容で、歌詞に合わせて中学生のソロ、中学生の合唱、大人の合唱、中学生と大人のソリ、と合唱は展開していった。

さて、合唱のワークショップは可能か、という最初の疑問はどうなったか?結論からすると、その芽=可能性を見た、という感じ。

今回のプロジェクトには、複数のWSDが関わっていた。まず、首謀者のだいすけさん(阪大9期)。そして、「手紙」の伴奏と、一日目はリフレクションタイムの担当をしたまなみん(阪大9期)。別の曲でバイオリンをひいたふーさん(阪大8期)。松山から写真係として駆けつけたいっちゃん(阪大8期)。観客として応援に来てくれたあっこさんとさんぽんさん(阪大9期)。
2日目の夜は、合唱団の皆さんも交えて飲み会、さらになぜかロッテリアに場所を移して、WSD達でのリフレクションだった。そこでは、音楽という分野でのワークショップの可能性について、話が盛り上がった。

今回のWSで言うと、コミュニケーションを促し、仲間づくりをするという狙いは見事達成。そして、大人にとっても中学生にとっても、大きな刺激となり、合唱へのさらなる動機づけになったことも確か。でも、さらに先を目指すなら、コミュニケーションで終わらず、「音楽」「合唱」そのものについて自ら発見し、表現をランクアップさせていくための仕掛けや手法が欲しいという話になった。この話は、音楽については素人の私にとっても面白かった。(“自由な表現”と“型”についてのもろもろ。これについてはまた記事を分けて書き留める予定)

「演劇の分野ではWSの手法が確立している。でも音楽の世界では、ワークショップといっても結局レッスンだったりする。ゼロから作り上げていかないといけない」のだそうだ。そういうわけで、この夜、音楽系のWSについて勉強や実践をするユニットが発足していた。

*****************************

今回、こんな楽しくて刺激的な機会を与えたくれただいすけさんとEVANのみなさん、FBの呼びかけに応えて、車にも乗せてくれたいっちゃん、興味深いリフレクションタイムを共有してくれたまなみん、他阪大のみなさん、そして山科中学合唱団のみなさん、顧問のみどり先生、本当にありがとうございました。(^^)/

※橋爪大輔さんのブログがこちら。このブログがあまりにも面白くて京都に行ったと言っても過言ではありません。
指揮者のつぶやき―橋爪大輔ブログ

2013年07月15日
カテゴリ:指揮者のつぶやき


HOME

コメントを残す

ページトップへ