このつぶやきで何度か書いていますが、私はこの4月から大阪大学のワークショップデザイナー育成プログラムを受講しています。「ワークショップ」の定義は曖昧としていますが(むしろ定型を持たない方が良いらしい)、従来の学習観の対義語として使われているようです。これまでの「学習」は「知識の獲得」に対して、これからの「学習」は「共同体への参加」。参加すること自体に「学び」がある、という意味です。学びの参加者(子どもたち)は「同じ知識で満たされる真っ白な容器」ではなく「仲間と共同する独立した個人」。教える側(教師)は「すべての知識の源泉」ではなく「知的資源への学習ガイド」(教育工学事典より)。ワークショップは教育現場が陥りがちな「一方向」「座学」という形式を補完する、「参加型」「体験型」「双方向型」の学習として、近年、注目されています。
さて、前置きが長くなりましたが、その大阪大学での学びを実践するべく、Ensemble EVANは山科中学校の合唱部(京都)とワークショップを開催することが決定しました(実施するにあたり、お話を引き受けて下さった、顧問の伊藤先生、校長先生、そして合唱部の子どもたちに感謝を申し上げます)。このワークショップは子どもたちにとっても、私たちにとっても双方に得るものがあると思います。
先日、山科中学校にお邪魔した時、先生からは「他の合唱団体との交流も少ないし、子どもたちにとって刺激になれば・・・」とお伺いしていました。エバンにいる「へんな大人」との交流によって、合唱部の子どもたちは「自分達のしている活動」を再認識する機会を得るでしょうし、合唱と自分との関わりについて、将来の時間軸も含めた、多様な価値観を育む体験にもなるでしょう。それは、合唱のテクニックを磨くこと以上に、大切な学びになると私は信じています。
また、社会的に見ても、今、子どもたちには「ナナメの関係」が必要と言われています。「社会全体で子どもを育て守るためには、親でも教師でもない第三者と子どもとの新しい関係『ナナメの関係』をつくることが大切である。地域社会と協同し、学校内外で子どもが多くの大人と接する機会を増やすことが重要である。」(文部科学省のHPより)。「地域の人材が授業を始めとする教育活動全体に参画できる多様な機会を用意」「子どもが身近に接する大人との多様な関係を学校内外で形成できるようにするためには、地域の人たちが気軽に学校に入れる仕組みが必要である。このため、学校は、安全管理に配慮しつつ、地域の自治会等との連携のもと校舎校庭の地域開放を積極的に進めること」「子どもが信頼を寄せて模範とするような人材や、子どもに大切なことを伝えていくための地域の協力者を粘り強く養成・確保していくための方策が必要」というような文章は、まさにエバンが実践しようとしている領域であるわけです。
エバンにとっても、プラスになる体験となるでしょう。私たちは「自主公演」や「コンクールへの出場」よりも、地域に出向き、普段合唱音楽をあまり耳にしない一般の方々にむけて演奏することを、活動の柱の一つにしています(もちろん、コンクールへの出場も大切な経験なので、それはまた別の団体「めめもアンサンブル」で行おうとしています)。また、他の団体との共演も行ってきました(「日本語ユースプロジェクト」「響け!大栗裕マンドリン音楽の世界」「Harmony for Japan 2013」)。合同演奏を成功させるには、団体の垣根を越えて、価値観を共有し合い、お互いの差異≪わかりあえないこと≫を認識した上で合意形成を図り、アウトプットを一つにする、という作業を必要とします。エバンは数回の合同演奏プロジェクトによって「共演の得意な合唱団」に成長しつつあります。つまり、「コンクールで競争する」のではなく、「地域に出向き、地域の団体と共創する」活動がエバンの団体としての特徴になるのでは、と思うのです。
今後、5月末に【橋爪×合唱部 プレワークショップ】を行った後、【合唱部×Ensemble EVAN ワークショップ】を実現します。その成果を7月13日の山科駅「音の広場」で発表致します。子どもたちにとってもエバンにとっても良い出会いとなりますように。
ワークショップ頑張ってください^^
ちなみに山科中学校は僕の母校です。