「聴く」ことと「静けさ」について

イギリスの声楽アンサンブルグループ・タリススコラーズが去年、
来日して、西宮で演奏会を行ったので、聴きに行ったときのことです。

舞台上にメンバーが並び、演奏が始まったとき、
「意外と声量は小さいな」と思いました。
席が舞台から離れていたからかもしれません。

でも、驚いたのは、
1曲目が終わり、2曲目が始まるころには、
その声量が倍ぐらい違っていたことでした。

私が考えるに、演奏が始まる前、
客席は話し声が聞こえたり、
チラシのカサカサとした音、
通路を歩く音が聞こえていました。

その客席が、タリスの絶妙な演奏によって、
自然と「聞く」から「聴く」に変わっていったのでは、と思います。

我々は、普段、相手に声が届かないな、と感じた場合、
相手に届くように、より大きな声量で話そうとします。

学校の先生でも、体育館に子どもを並べるとき、
ザワザワとした中で「並んで~!」と叫ぶ先生は多いですよね。
(仕事中、本番が始まる前、舞台裏でその光景をよく見ています^^;)

でも、中には、先生がサッと右拳を上げると、
子どもたちがシュシュっと並ぶクラスもあります。
うわ~、賢いクラスやなあと思います。

フランスでピーター・エルダイのワークショップを受けた時、
ザワつく合唱団の前で、ピーターは何も喋らず、
人差し指を口に付けて、静まるのを待ちました。

待っている間、ピーターは目だけキョロキョロさせて、
自分と同じくらい静かになっている人を探し、
目と目が合うとニコッと微笑みました。
私はピーターに微笑まれたとき、
本当に幸せな気持ちになりました。

さて、EVANの練習でも、
「静けさ」の中で練習を進める、という
当たり前のようで、少し難しい(?)ことを
毎回、やるように心がけています。

「静けさ」の中に集団が居る、という体験は
本来、気持ちのいいものだと私は思っています。

喋らないと不安になる人もいるのかもしれません。
でも、喋らなくても、安心して過ごせるような活動が出来たらと思います。

「お友達と喋ることで自分の居場所を見つけなくていいんだよ」
「静かに一人でいても、ここはあなたの居場所だよ」

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